研究員コラム

2025
01

津波と白兎

昔ばなしですが、記憶に残る調査の中に歴史地震による津波痕跡調査を行ったことがあります。多くの場合、当時の津波痕跡が残っている訳ではありませんので、古文書の内容から場所を特定し、測量成果と被害状況から当時の津波高を推定する調査です。

主に西日本の沿岸部で大地震による津波被害を受けた地区を対象に、歴史地震や津波がご専門であるT先生と共に、時に道なき道を進んで各地を巡りました。

調査の過程で、多くの地元神社にも訪れました。神社は、津波被害の無い場所に建てられている(あるいは移設されている)場合が多いからです。

宮崎市新別府(しんびょう)には、「一葉稲荷神社」があり、商売繁昌や家内安全と併せて災難厄除けの御利益があります。御本殿の裏にまわり、軒下に目を向けると、そこには、大波を蹴る白兎の彫刻があります。1662年10月31日に日向灘を震源とする大地震(M7.6)がありました。「外所(とんどころ)地震」とも呼ばれ、宮崎市内の広い範囲で津波による浸水被害が発生したとの記録が残っています。神社は沿岸近くに鎮座しますが、記録では、神社への津波浸水はありませんでした。伝承では、その時に1匹の白兎が現れ、津波を蹴り返して神社を守ったとのことです。

境内には、金運向上にご利益のある「銭洗い神社」もあり、ここで洗った500円玉が今でも財布に入っています。言わずもがな、ご利益はバッチリ(詳細はご想像にお任せします)です。

(第1調査研究部 岩瀬 浩之)

場  所
宮崎市新別府町前浜1402
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