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2024
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都市漁村交流推進協議会総会を開催しました

都市漁村交流推進協議会(会長・藤本昭夫大分県姫島村長、事務局・一般財団法人 漁港漁場漁村総合研究所)は、令和6年8月2日、総会及びシンポジウムを開催した。

総会概要

日時 令和6年8月2日(金)11:30~12:00
場所 東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2 エッサム神田ホール1号館2階多目的ホール(201)
議案 ①令和5年度活動報告及び決算報告について/②令和6年度活動計画及び予算計画(案)について

議事要項

藤本会長の開催挨拶、引き続き水産庁漁港漁場整備部 櫻井防災漁村課長の来賓祝辞の後、藤本会長が議長を務め議事に入った。
事務局より議案について説明が行われ、意見等諮ったところ異議なく承認された。
また、藤本会長から協議会の進化に向けた提案として、「漁港漁場整備長期計画」や「骨太の方針」に海業の振興が掲げられ、水産庁が施策の柱として海業を推進していることから、従来の組織の目的を継承しつつ、より発展的、広義的に活動しうる組織((仮称)海業推進協議会)へ改組してはどうかとの提示がなされ、事務局に検討・とりまとめを依頼した。
総会開催後、「漁村に『泊まる』で朝から晩まで地元を満喫」をテーマに、シンポジウム『トーク&トーク:まちに元気を!』を開催した。

トーク&トーク
『まちに元気を!~全国発、まちおこしに向けた都市漁村交流の可能性とあり方を探る~』を開催しました

開催概要

時間 13:30~15:15
参加費 無料
参加者数 会場 76名、オンライン 55名(計131名)

主催者挨拶

都市漁村交流推進協議会 会長 大分県姫島村長 藤本 昭夫 氏

本日は、令和6年度トーク&トークにご参加いただきありがとうございます。毎年、本協議会の活動の一環として、都市漁村交流の展開を探るための意見交換の場として、会員だけでなく、都市漁村交流活動に関心をお持ちの多くの皆さんにもご参加いただき開催しています。本年のテーマは、「漁村に「泊まる」で朝から晩まで地元を満喫」です。泊まることでゆっくり過ごしつつ、地域の魅力をまるまる体感していただけることから、宿泊を介して都市と漁村がつながっていく未来を願い、漁村に泊まることでの地域の魅力を引き出すことについて考える場にしたいと考えております。
本日は会場に多数ご参加いただいておりますが、オンラインでも多くの皆様にご参加いただいています。昨年同様オンライン併用のシンポジウムを開催し、これにより、遠方からもご参加いただけるようになったことは、非常に喜ばしいことです。
また、最後に本協議会からひとつお願いがあります。本日は、本協議会の会員以外の方も、多数ご参加いただいていますが、皆様の中で、私どもと一緒に、都市漁村交流活動を活性化しようとお考えの方がいらっしゃれば、是非会員参加の申込みをしていただければ幸いでございます。また、先ほどの総会にて、本協議会の発展的改組を私から提案させていただきました。海業の全国展開が水産庁の重要課題とされる中、都市漁村交流を包括する形で新たな協議会を立案するよう事務局にお願いしたところです。今後、関係各位にお願いする予定ですので、趣旨をご理解いただきご賛同いただきますようお願いいたします。
本日はお忙しい中をご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

来賓挨拶

水産庁漁港漁場整備部防災漁村課長 櫻井 政和 氏

開催にあたり一言ご挨拶を申し上げます。
水産業、漁業を取り巻く環境は、海洋環境の変化による不漁問題の長期化、漁業者の高齢化、漁村の人口減少、新型コロナウイルス感染症による個人の行動様式の変化等問題が山積みとなっております。これらの影響により、水産業や漁村では、漁獲量の減少や、漁価の低迷、漁業所得の減少等、様々な懸念が出てきております。漁港漁村のもつ地域資源をフル活用して、国内旅行客またインバウンドも上手に取り込みながら、都市漁村の交流を促進することにより、漁村地域の活性化、漁業者の所得向上を図っていくことが、我が国水産業の成長にとって極めて重要なものだと考えています。このような考えのもと、令和4年に策定した漁港漁場整備長期計画において、漁村の方々が、海や漁村の地域資源の魅力や価値を生かして、所得の増大を図る取組である海業を含め地域の賑わいや所得と雇用を生み出すとともに、渚泊やワーケーションなどの交流人口、関係人口の創出、都市漁村交流人口をおおむね200万人増加させることを目指しているところです。
また、本年4月から施行された改正漁港漁場整備法において、漁港における民間事業者による海業の取組を推進する新たな制度が創設され、この制度を活用いただき、漁港や漁村における海業の取組が全国で展開されることを目指しております。
漁村に滞在し、地域資源を活用して食事や体験等を楽しむことを漁村滞在型旅行、略して渚泊と言っておりますが、これらを活用し交流関係人口の増加に取り組む3名のご講演者のお話しを楽しみにしております。
結びに、本日のシンポジウムが都市漁村の交流活動や地域活性化に取り組む皆様にとって、有意義なものになることを祈念し挨拶とさせていただきます。

話題提供

  • 劔崎 聖生 氏
  • 『海業の推進による漁村の活性化』
    劔崎 聖生 氏(水産庁 漁港漁場整備部計画課 課長補佐)
劔崎 聖生 氏

ただいまご紹介いただきました水産庁計画課で海業を担当しております劔崎と申します。本日はお招きいただきありがとうございます。
漁村は人口減少・高齢化も進み、また気候変動等で魚が獲れない、獲れる魚が変わった等の取り巻く状況が厳しい中、漁村に来る人はたくさんおり、漁村には非常にポテンシャルがあり、魅力にあふれているのではないかと思います。そういうところをうまく捉えていこうというのが海業であり、海や漁村の魅力的な地域資源や独自の文化風景等を生かし、水産物の消費増大、交流促進をし、地域の所得や雇用機会の確保を目指す海業、これは都市漁村交流と目指すところは同じなのかなと思います。

水産基本計画及び漁港漁場整備長期計画

令和4年度に策定された水産基本計画の柱の一つに「地域を支える漁村の活性化の推進」があり、海業など漁業以外の産業の取組による漁村の活性化が重要な施策として位置付けられております。また同時期に策定された漁港漁場整備長期計画においても、海業の振興と多様な人材の活躍による漁村の魅力と所得の向上を重点課題とし、成果目標として都市漁村交流人口を5年間でおおむね200万人増加させる、新たな海業の取組をおおむね500件創出することを掲げ、各種施策を展開しております。

事例紹介

⑴ 都屋漁港(沖縄県読谷村)<読谷村漁業協同組合>
老朽化した荷さばき所を食堂や直売所等一体的な複合施設として再整備。施設で販売する食材を荷さばき所から直接仕入れるため、買い支え機能を果たし、漁獲量、陸揚金額が向上。
⑵ 富浦漁港(千葉県南房総市)<岩井富浦漁業協同組合>
観光等の異業種と連携し、魚食普及食堂を整備。提供する水産物の約5割を富浦漁港から仕入れ、漁獲量の向上・安定化に寄与。
⑶ 内外海漁港(福井県小浜市)
交流・体験型施設「ブルーパーク阿納」開所。港内泊地で釣り体験、魚捌き体験、BBQスペースの整備、背後集落には漁家民宿が多数あり、地域一帯となり、漁業体験、水産物消費、宿泊とパッケージとなった体験型ツアーを展開し、地域活性化に寄与。
⑷ 妻鹿漁港(兵庫県姫路市)
坊勢漁業協同組合が、漁港用地を有効活用し直販・食堂等施設「まえどれ市場」整備。漁業見学用の体験船も自前で整備。日帰り型から宿泊型観光(渚泊)への転換を目指し、旅行会社等と連携。
⑸ 歯舞漁業協同組合(北海道根室市)
これまでも漁協単独で様々な都市漁村交流活動を行ってきたが、地域の協議会、地元ホテル、旅行会社と連携し、規模拡大を図る。世界的にも珍しい渡り鳥を見に来る外国からの来訪者対応としてタブレットを整備する等インバウンド対応も実施。
⑹ 鳥羽渚泊推進協議会(三重県鳥羽市)
地域の様々な主体(ツアー企画会社、漁協、市、水産加工業者等)が協議会を設立し、インターンシップによる「学生の力」を活用した学生を対象とした渚泊の検討、地域の体験型ツアープログラムの開発を実施。

漁港漁場整備法等の一部改正

漁港における海業の取組の推進及び漁港の機能強化のため昨年度法改正し、本年4月から漁港及び漁場の整備等に関する法律が施行されております。
漁業の根拠地である漁港を、民間の方々の事業や取組に活用しやすいよう漁業上の利用を確保した上で漁港施設を有効活用できる、漁港施設等活用事業制度を創設しました。
漁港管理者が活用推進計画を策定し、策定された漁港において、海業をやる事業者が実施計画の認定を受け、
①漁港施設の長期貸付(最大30年)
②漁港水面施設運営権(最大10年)の設定
③水面等の長期占用(最大30年)
ができる仕組みとなっています。

海業推進の支援事業

農林水産省には浜の活力再生・成長促進交付金や農山漁村振興交付金等があり、また関係省庁の制度や事業を紹介してある「海業支援パッケージ」を作成してありますので、ご覧いただければと思います。
また、水産庁には海業振興コンシェルジュという一元的な窓口も作っておりますので、是非ご相談下さい。
ご清聴ありがとうございました。

講演

  • 上野 祐一朗 氏
  • 『漁村×こども の教育・観光の可能性について~地域の“当たり前”が、こどもたちの最高の学び場に~』
    上野 祐一朗 氏(アクトインディ株式会社 子育て支援事業部)
上野 祐一朗 氏

みなさん、こんにちは。本日は大変光栄な場にお招きいただき誠にありがとうございます。私はアクトインディ株式会社子育て支援事業部の上野祐一朗と申します。アクトインディは、親子向けおでかけ情報サイト「いこーよ」を運営するWEBメディアの会社です。お出かけを通して、子供達に地域の価値だったり、そこにしかない体験を通じ、いろんな成長をしてもらいたいと思っています。また、5年前から日本財団さんと一緒に海と日本プロジェクトの中で、海の仕事体験であったり、学習プログラム臨海学校の教育プラグラムを実施しています。

観光体験(教育) 一般家族向け

『本物の現場で本物の達人から本物の仕事を経験する。』
「お仕事体験」といったテーマで、海の仕事を観光・教育コンテンツ化する企画運営を行っています。これは、ただ漁業体験をする、魚を獲った、食べた、楽しかったというレジャーとしてだけでなく、実際に地域の人と一緒にお仕事をし、お仕事を通じた中で、漁師の仕事について考えたり、海の様々な特徴や魅力、課題を知ってもらいたいという思いで、これまで全国で海のお仕事を100種類以上体験化して実施しています。
漁業体験を受け入れてもらう際、子供達をもてなさなきゃいけないんじゃないか、子供とうまく話せるか、などの心配をされますが、テーマを「仕事」にしているので「いつも通り仕事をしてください」、「仕事人として話しをしてください」等と伝えて、企画をしています。

観光体験(教育) 小学校向け

『義務教育の中で 海を知り、海の課題を考える機会を提供する。』
臨海学校で海の近くまで行っているのに、リスクがあるから等の理由で海に一切入らないことがあります。そこで、漁港を活用しながら、いかに海に触れてもらうかという企画を始めました。
昨今の子供は、海離れしていると言われており、東京都内のある小学校5年生を対象に調査をしたところ、約10%は海に1回も行ったことがないという結果でした。生魚にも触ったことがない、切り身で泳いでると思ってる生徒が本当にいて、その子たちが大人になったとき、自分の子どもを海に連れていくのか、まったく海に気持ちがない子どもが増えてしまうのではないかと思っています。ですので、我々は幼少期から海はいいな、楽しいなと思ってもらうような機会を義務教育の現場の中でも作っていきたいと思っております。

体験企画で大事にしていること

①体験の“ストーリー”を大事にする
②「体験」を多面的に考えてみる
③参加する子供を通して、大人に何を伝えるか

体験企画で大事にしていること

①きっかけを作る・変えるのは「よそ者・馬鹿者・若者」“子どもたちに体験してもらいたい”の信念で、地域のしがらみを突破
②地域の当たり前を“面白い!”に変える・気づいてもらう
③地域に子供たちの笑顔を届け、第一歩目を。“空気”を作る。
④海好き・体験好き会員からデータ/ノウハウ蓄積・メソッド化

  • 濱住 博之 氏
  • 『渚泊魚津丸の現状とこれからの展望』
    濱住 博之 氏(魚津漁業協同組合代表理事組合長)
濱住 博之 氏

皆さんこんにちは。魚津漁業協同組合で代表理事を務めております濱住です。宜しくお願い致します。今日はなぜ漁協が直営で、こういった宿泊施設をやって、利益を出せる構造ができたかという話しをさせていただきます。

きっかけ

これまで魚津市と一緒に、世田谷や板橋の区民祭り等に水産物を持っていき販売をしていました。ですが、結果としてそれが交流人口につながったかと言えば、決してそうではありませんでした。
農業の方では農泊というのが進められていて、やっぱり地方に来てもらい、泊まって、魚を食べてもらわないと交流人口は増えないんじゃないのかなと思い、それで渚泊を目指しました。

協議会設立と渚泊

森林組合、内水面漁協、農業者、観光協会等と協議会を設立しました。学生を招き、投網や鮭のつかみ取り、蛸壺漁等の漁業体験モニターツアーを企画し、市内の宿泊施設と連携し宿泊はビジネスホテルや旅館を利用し、これで渚泊っていうものになるんじゃないかと思ってはいましたが…。

魚津丸プロジェクトスタート

しかし、企画と民間宿泊施設とがうまくかみ合わなかったり、漁協の収益性もあまり高まりませんでした。
そこで遊休施設を改良し自前で宿泊施設を作ったらどうかなと思いつつも、金銭面や運営ノウハウ等の課題がありました。まずは農山漁村振興交付金の補助を使って倉庫を食堂にリノベーションしました。翌年、その隣に一棟貸しの宿を建設し、次の年、魚津水族館に隣接した食堂をスタートさせました。

運営について

漁協には宿泊施設運営の経験がないことから、設計会社の紹介を受け、代行業者を入れることにしました。その代行業者さんに、予約サイトairbnb(エアビーアンドビー)の登録もやっていただきました。
予約・キャンセル・問い合わせや、夏期や正月は高めにするなどの価格設定、代金精算等すべてやってもらい、連絡はLINEでやりとりします。
清掃、アメニティ補充は、漁協女性部のメンバーに協力してもらっています。また、清掃のスケジュールも運営代行からLINEで来ます。

宿泊者推移

令和元年6月からスタートし初年は390人の利用がありました。利用者数が増えてきたところ、コロナ禍で低迷しましたが、最近は堅調に増加し、令和5年はアジア、アメリカ等インバウンドもあります。

今後の展望

休前日は予約が入るが、平日がやっぱり少ない。そこで、ワーケーションにプラスして、ファミリーワーケーションという取組を始めました。これは家族全員で田舎へ行こうというものです。親が仕事中、子どもは地域の保育園に遊学するというものです。地域の保育園も非常に協力的で受け入れてくれ、保母さんもためになっているそうです。

  • 阿部 久良 氏
  • 『雄勝町での渚泊の取組』
    阿部 久良 氏(一般社団法人Calm Style代表理事)
阿部 久良 氏

こんにちは。ご紹介いただきました宮城県石巻市の雄勝町から参りました一般社団法人CalmStyle代表の阿部と申します。
東日本大震災が発生するまではホタテの養殖をやっていました。震災で船3隻すべてが流され、養殖もできない状態になってしまい、そこで地元で何かやれることはないかということで、雄勝町渚泊推進協議会を始めました。

空き家の再利用

震災までは民宿や釣り宿がけっこうありましたが、ほぼすべてが被災し、結果3軒くらいしか残らず、震災後ボランティアの方等いらっしゃるようになりましたが、滞在できる場所が無く、そこをなんとかできないか考えました。
使っていない古民家を手作業でリノベーションし、新たに3軒、宿として稼働させました。

漁業体験プログラム

次に、渚泊の核となる漁業体験プログラムとして、漁師さんたちの生活をそのままリアルに体験してもらう、というものを企画しました。漁師さんたちには「何もしなくていいですよ。普段通りの生活の中で、お客さんを受け入れてください」という形で受け入れてもらいました。漁師さんと一緒に夜中2時3時に起きて漁に行ったりと、リアルな体験が出来、お客さんにも大変人気になっています。

マリンレジャー体験と地元産品の商品化

一年を通して穏やかな雄勝湾でのSUP体験や普段は漁船として使っているさっぱ船でのクルーズを企画しました。
また特産のホタテを使った商品開発として石焼ホタテラーメンなどのレシピを作り、道の駅で提供してもらえないか相談しているところです。

インバウンド対策

海外6か国から参加いただき、雲丹採り体験等2泊3日のモニターツアーや、情報発信として8か国語対応のホームページ「おがつたび」を制作したり、宿泊施設や飲食店に英語表記の案内板やメニューの設置、ポケトークの無料貸出を、農山漁村振興交付金を活用して実施しました。

教育旅行の受け入れ

コロナ禍以降、教育旅行の受け入れを5校程やっております。
参加人数は1校あたり5名~50名程度で、参加の主目的は防災教育で、その他は雄勝町でしかできない経験をさせたい、地域の方々との交流、漁村での生業を学習するというものでした。

今後の課題と展望

①現在、宿泊施設として稼働しているのが6軒しかなく、大人数(団体)の受け入れが難しい。廃業した民宿の再利用再活用を検討している。
②オフシーズン(冬場)になると観光客が激減するので、冬ならではの体験プログラムを考えている。
③本業である漁業が忙しい時期や、お客さんが重なったりしてしまうと、現在協力してくれてる漁師さん達だけでは対応が難しいので、漁業体験の受け入れ先の拡大が課題。

(第3調査研究部 鵜沼 陽一朗)

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