第1調査研究部の調査研究情報

調査研究事例の紹介

事例1:特定第3種漁港の流通拠点整備(衛生管理対応の流通拠点としての計画策定)

  • 漁港は、漁船から漁獲物が陸に揚げられる水産物流通システムの出発となる施設であり、様々な作業が集中する衛生管理上重要な箇所です。衛生管理の検討にあたっては、産地内の各漁港において機能・役割が異なることから、十分それらを踏まえる必要があります。
  • 漁港において水産物の品質や安全性を低下させる要因としては、下図のような影響があります。
特定第3種漁港の流通拠点整備
衛生管理対応の漁港(搬出口・プラットフォーム)

衛生管理対応の漁港(搬出口・プラットフォーム)

  • こうした影響から水産物の安全を確保するためには、以下のようなことが重要です。
    ①水産物を扱う場所を清潔に保つこと
    ②水産物の品質が保たれるように水産物を適切に扱うこと
    ③水産物を扱う人が衛生管理を熟知し実行すること
  • 漁村総研では、漁港の衛生管理対策として、EU輸出に向けたハード整備や、優良衛生品質管理市場・漁港認定に向けたソフト対策等、ハード・ソフトの両面で支援しています。近年携わった実績としては:気仙沼漁港、石巻漁港、塩釜漁港、銚子漁港、境漁港、下関漁港、長崎漁港、枕崎漁港(以上、特定第3種漁港)、大社漁港(第3種漁港)、和江漁港及び遊木漁港(第2種漁港)等があります。

事例2:津波避難施設(人工地盤)に作用する津波による外力算定法

避難誘導デッキ模型設置状況

避難誘導デッキ模型設置状況

  • 津波避難施設(人工地盤)に作用する津波による外力の算定法を水理模型実験により検討・整理し、水平力としては谷本式,上揚力としては、幸左らの方法を用いることができることを明らかにしました。(本調査は岩手県発注による「平成24年度 津波避難施設実証モデル事業」の一部をとりまとめたものです。)
実験模型概要図

実験模型概要図

水平波力と水位の時系列(防潮堤無し)

水平波力と水位の時系列(防潮堤無し)

事例3:沖縄県下の漁業地域における防災・減災計画の策定

  • 沖縄県には88の漁港が点在し、それぞれ営まれている漁業や背後集落地形、想定される地震・津波が異なるため、各漁業地域の実態に応じた防災・減災計画を立案していくことが重要です。
  • 漁業地域では津波が最初に到達する水際にある漁港施設で多くの漁業者が作業しており、地形によっては漁港前面のリーフを漁場としているケースも少なくありません。しかし、市町村で策定されている防災・減災計画の多くは、住宅地を主として考えられており、最も早く津波が到達する漁港を対象としていないのが実態です。
  • そこで、沖縄県では漁業地域における防災・減災計画を策定するため、防災拠点漁港と位置づけられている県管理漁港(渡名喜漁港、佐良浜漁港)をモデル地区とし、地域住民による協議会を設置し、現状の課題から今後の避難のあり方等について、シミュレーション結果等を踏まえて議論を行った上で、計画を策定しました。(本調査は沖縄県農林水産部より受注した「漁業地域防災計画検討業務 平成25年6月」による調査結果を取りまとめたものです。)
津波避難シミュレーション

津波避難シミュレーション


主な調査研究事項

第一調査研究部では、漁港・漁村における水産基盤整備等の計画・設計に関し、自主研究により、あるいは水産庁や地方公共団体等からの委託事業等により、調査研究と技術開発を行ってきました。
具体的な調査研究の内容は次のとおりです。

計画立案技術及び計画評価技術に関する調査、研究及び開発

漁港については、効率的な整備の推進、安全で安心な水産物の供給等の見地から、水産基盤整備の計画及び評価技術等に係る調査、研究及び開発を行いました。
また、漁村については、水産業の振興、地域の活性化及び生活環境の改善等の見地から、地域振興等に関する調査、研究及び開発を行いました。

自主研究事業
  • 漁港関係としては、食の安全に対する関心の高まりを受け、衛生品質管理基準に対応した漁港施設の計画及び整備基準に関する調査を実施しました。また、漁港内の安全性や利便性の維持・向上を図るため、漁港の漂砂問題に関しシミュレーション等を行いながら港内・航路の埋没に至るメカニズムの解明や必要とされる対応策の提案を行いました。
  • 漁村関係としては、多面的な機能を担う漁村を維持し、活性化していくことが喫緊の課題として認識されるようになってきたことから、商品開発やブランド化等を通じた6次産業化、都市との交流による地域活性化等の調査を実施しました。
  • 水産物流通等の観点からは、漁業地域における産業連関分析、水産物のトレーサビリティ、地域経済への波及効果を踏まえた集出荷圏域の設定に関する調査を実施しました。
  • その他、魚食普及、漁港・漁村の情報化等の調査を実施しました。
補助事業
  • 省エネルギーに資する衛生管理技術の開発や、漁業地域で創設された産地協議会の活動支援を実施しました。
受託調査研究事業
  • 漁港関係としては、漁港の特定事業計画に係る計画策定業務を行った他、特定第3種漁港については衛生管理対応の流通拠点として整備するための計画策定業務を行いました。
  • 水産関係公共事業については、事業実施過程の透明性と客観性の確保、効率的な事業執行の実現を目的とした費用対効果分析手法の検討業務や、これらに基づく事後評価の支援業務等を行いました。
  • 漁村関係としては、水産物の安定供給、漁村文化の継承、環境保全等の多面的な機能を担ってきた漁村が、引き続きこれらの役割を担うことができるよう、活力ある漁村づくり、生活環境の改善施策のあり方、漁村の総合的振興方策の実現に向けた課題解決と適正評価等の業務を行いました。
  • その他、プレジャーボートの収容施設に係る実態調査、漁港内の水質改善調査、漁港整備に係る圏域設定手法の開発等に関する業務を行いました。

設計技術、施工技術及び管理運営技術に関する調査、研究及び開発

漁港施設及び漁港海岸施設に関する統一的な技術の確立に資する調査、研究及び開発を行いました。

自主研究事業
  • 漁港関係としては、これまでに整備されてきた漁港施設の老朽化が進み、今後多くの漁港施設で機能や安全性の低下が懸念されていることから、老朽化構造物に対する補修技術や機能保全に関する調査を実施しました。
  • 漁村関係としては、海に近い厳しい環境下に整備されることの多い漁業集落排水施設の機能保全対策の他、漁業集落排水施設特有の問題として、処理槽内の硫化水素によるコンクリート腐食に関しその対策を検討しました。
  • この他、地球温暖化防止・温室効果ガス排出量の削減等の観点から、今後、漁港・漁村においても太陽光、風力発電等の再生可能エネルギーの導入が求められるものと考えられたため、漁港・漁村における再生可能エネルギーの利活用に関する調査を行うとともに、雪氷熱エネルギーの利活用について調査を実施しました。
受託調査研究事業
  • 漁港関係としては、施設の設計に関し、国際化への対応や性能規定化など、設計基準の見直しに係る業務を行いました。個別の施設についても、漁港の基本施設に係る設計の他、衛生管理型魚市場や防風防暑施設等の設計業務を行いました。
  • 水産基盤整備事業をとりまく諸情勢の変化や個別の課題に対応するものとして、漁港施設のストックマネージメント手法の開発、環境に配慮した整備手法、再生可能エネルギーの利活用、自然調和型の漁港づくり、漂砂対策、設計沖波の見直し、漁港の静穏度解析等の業務を行いました。
  • 漁港海岸関係としては、設計の手引きの性能規定化、地球温暖化に対応した整備技術の検討、漁港海岸における土砂管理の推進に関する調査業務を行いました。
  • 漁村関係としては、漁港施設と同じく既存施設の老朽化に対応するものとして、漁業集落排水施設の機能診断や機能保全計画の策定業務を行いました。

防災技術に関する調査、研究及び開発

漁港・漁村における防災対策を強化するため、地震・津波に対する漁港施設の新たな設計方法、避難のあり方など、ハード・ソフト両面の対策について調査、研究及び開発を行いました。

自主研究事業
  • 我が国における地震の発生頻度や過去に繰り返し発生した甚大な津波被害を踏まえ、災害に強い漁業地域づくりの検討をはじめ、地震・津波に対する各種施設の安全性評価、沿岸漁業者の津波避難訓練、漁業集落の孤立の危険性等について検討しました。
  • 特に、東日本大震災後は、被災状況の調査を行うとともに、得られた様々な教訓を今後に生かすため、地震・津波に対する防災減災対策とその効果、津波発生時の漂流物対策等について検討しました。
  • 地震・津波以外の現象として、あびき発生のメカニズムや港内副振動への対応策について検討しました。
受託調査研究事業
  • 漁港・漁村における防災減災対策を強化していくため、津波シミュレーション等により具体の被害を想定し、その対策を検討しました。また、災害発生後における市場等の機能維持や業務継続を目的とした防災・減災計画に関し、地域主体の計画策定を促すマニュアル作りの業務を行いました。
  • 特に、東日本大震災後は、水産関係施設等の被害状況調査や防災対策の緊急点検業務を行った他、漁港施設や漁業集落排水施設の災害復旧に係る設計業務、被災集落の復興に係る基本計画の策定、市場の復旧に係る基本計画、漁港の復旧・復興に係る圏域設定手法に関する業務を行いました。
  • この他、堤防の耐震化に係る設計業務等を行いました。

今後の調査研究の展望

第一調査研究部では、引き続き漁港・漁村に関する計画策定や新たな技術開発等を行うこととしています。
これらの調査、研究及び開発の推進にあたっては、国の施策等を踏まえつつ、水産庁や地方公共団体から助言を頂き、連携を図りながら実施していくこととしています。
漁港漁場整備長期計画(平成24年3月24日閣議決定)を踏まえて整理した今後の調査研究に関する具体的な内容は次のとおりです。

災害に強く安全な地域づくり

  • 東日本大震災で被災した漁港・漁村の復興の推進に関する調査研究及び被災地における将来的な漁業地域のあり方について調査研究を行うこととしています。
  • 南海トラフ地震では、太平洋側において甚大な津波被害が想定されるため、東日本大震災で得られた教訓を生かし、多重防護や粘り強い構造物等による防災減災対策について調査研究を行うこととしています。

水産物の安定的な提供

  • 水産物の安定的な提供に資するため、漁港機能の適切な保全に資する既存施設の補修・改修、魅力的な地域資源を活用して新たな付加価値を生み出す6次産業化の推進、漁村の生活・労働環境と漁港の水域環境の改善に関する調査研究を行うこととしています。

国際化に対応できる力強い水産業づくり

  • 日本の水産物の競争力を高め、輸出の促進を図るため、生産コストの縮減、鮮度の保持、衛生管理対策の推進に関する調査研究を行うこととしています。